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【Music】英国紳士と紅茶/STING 『ラビリンス』

こんにちは、高野麻衣です。

晩夏のひと月は毎年「ヴィクトリアン強化月間」みたいなものなんですが、この秋はひどい。女王陛下のジュビリーやロンドン五輪もさることながら、映画版ホームズとドラマ『SHERLOCK』に火をつけられた英国萌えがとどまることを知らず――その思いは紙版花園magazine秋号にもぶつけますが――つい最近、とある英国紳士へのかなわぬ恋におちてしまいました。

彼の名はSTING。いわずとしれたThe Policeのフロントマンにしてベーシスト、およそ30年前のクールガイです。 ことのおこりはNHKの洋楽番組で、だいすきなこの曲〈Englishman in New York〉のPVを見たことなんです。


Sting - Englishman In New York - YouTube

STINGの歌はもともとベスト盤くらいは持っていたのですが、ビートルズなんかとおなじ“英国クラシックス”というイメージで、とくにアイドル視はしていなかったんです。

でも、このPVを見たら、もうこの紳士が『残酷な神が支配する』(萩尾望都)に出てくるオレ様ロン毛青年イアン・ローランドに見えてきて、ああ、オレ様イアン様だったらこの歌詞みたいに「おれはコーヒーは飲まない。紅茶が好きなんだ。話すアクセントでわかると思うが、おれはニューヨークの英国紳士だ」とか言ってそうだなーと考えたらますます見えてきて、全17巻をまた読み返してもう一度聴いて確信して、STINGはイアンのモデルだとまでおもいつめたわけです(※妄想)

おわかりとはおもいますが、萩尾先生はわたしの神様なのでこういう症状(妄想病)なったら話は早くて、わたしはSTINGの映像を漁りまくったんですね。代表作〈Every Breath You Take〉のこれとか。


The Police - Every Breath You Take - YouTube

もうどう考えてもストライクゾーンど真ん中なわけです。

長めの金髪、悪戯っぽいけど上品な佇まい、ベースを弾く指。80年代っぽい演出までいとおしい。いとおしくてたまらない。会いたい。けれども、もし来日したとしてもやってくるのは大御所STINGであって、30年前のこのクールガイSTINGではない。せつない――これがわたしの現在の状況です。

まあでも、歌っていいですね。声は永遠に変わらない。

秋の夜と紅茶にぴったり似合うダウランドのアルバムでも聴いていれば、まるでそばでクールガイが歌っている気分になれます。

2006年のアルバム『ラビリンス(Songs from the Labyrinth)』は、STINGが名門レーベル、ドイツ・グラモフォンから出したはじめてのクラシック・アルバム。16世紀イギリスの歌曲王ダウランドの代表曲を、リュートの演奏と音楽家の手紙の朗読を交えて紹介しています(いい声!)。 2009年の『ウィンターナイト(If On A Winter's Night...)』では、英国の子守唄や14世紀の聖歌、シューベルトパーセルなどをカヴァー。こちらはクリスマスにぴったりです。

STINGがインテリ英国紳士で、ほんとうによかった。 やっぱりわたしにとって英国紳士と紅茶は欠かせない、そんなことばかり考えている、秋なのです。  

Songs from the Labyrinth

Songs from the Labyrinth

 

(「花園magazine」初出)