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晴雨計 第15回 「花園magazine」

カルチャーイベントや学園祭が数多く開催される11月の三連休。東京・平和島で行われた「文学フリマ」で、仲間と作っている「花園magazine」の第3号を発売しました。特集は「読書」。とはいえ、秋冬シーズンに合わせたファッションやフード、インテリアと組み合わせた「本のあるライフスタイル」を意識した、グラビアたっぷりの仕上がり。美しいものを好む愛書家のみなさまにご好評いただいたようです。

 

「zine(ジン)」やリトルプレスと呼ばれるメディアをご存知でしょうか?

簡単にいえば、出版社や既存のメディアではなく、個人が自由に作った読み物のこと。書店やカフェで見かけるミニコミ小冊子のイメージが近いかもしれません。起源はいずれもアメリカで、1950年代にサンフランシスコの詩人たちが自費出版したのがはじまりとも、1980年代後半に西海岸のスケーターたちが写真や絵や詩を書いてコピーし、ホッチキスで留めて人々に配ったのがはじまりとも言われています。

同人誌といえば、日本の歴史上でも明治時代の「文学界」や「白樺」といった文芸系、1970年代にはじまりいまや数十万人を動員するコミックマーケット系という先例があります。「花園magazine」についてはそうですね、アメリカ生まれの「zine」との明治時代の「文学少女」ハーフと考えていただければ幸いです。ご先祖様はいざしらず、私たちは執筆も編集もレイアウトも本職が集まってきっちり校了日を決め、印刷所に入稿して作成中。関西から北海道まで、各地の取扱い拠点も徐々に広がってきました。

部活動のように楽しいけれど、内輪ウケにならないこと。新聞や商業誌からはこぼれてしまう小さきものたちを愛しながらも、メジャーの手法をとりいれていくこと。課題は山積みです。

 

それでもただひとつ、高田馬場の名物フレンチ「ラミティエ(友情)」で創刊宣言をしたときから、失いたくないと考えているzine魂があります。それは「こんな本が、こんな音楽が、こんな生活がスキだから紹介したい!」「だったら作ってみようか!」という初期衝動です。「愛するものを、より多くの仲間に知らせたい」という情熱です。いつかお店の片隅で見かけたら、そのときはぜひ、私たちの花園を覗いてみてくださいね。

 (2013年11月8日付「新潟日報」初出)