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晴雨計 第17回 「妹の結婚」

11月のとある日曜日、神田のカトリック教会で友人夫妻が挙式しました。私と仲間の5人はブライズ・メイズ。外国の映画やドラマで見かけては憧れていた、未婚の友人たちが務める「花嫁の付添」役でした。ドレスの色は花嫁のお色直しに合わせて統一し、デザインは各自のキャラクターに合わせてバラバラにオーダー。菫色の集団はどこにいても目立ち、ブーケトスも記念撮影も楽しくて、とても幸福な思い出になりました。

折りも折り、新潟の実家では妹の結婚話が進行中。すでに昨年末から話は聞いていたのですが、ある日フェイスブックに「緊張の両家お食事会」との記述。いよいよ本格的に動き出したようなのです。

一抹の寂しさを覚えつつ、私は妹に、ぜひブライズ・メイズを結成すべきだと進言しました。妹は友人も多いし、きっと華やかで楽しいものになるはずです。ところが返答はシンプルに一言、「未婚の親友がいない」。

まあ、おかしくはないのです。妹も30歳。友人たちもほとんど地元にいますし、あきらかに「落ちつく年頃」なのでしょう。

それに引きかえ4つ上の私とその周囲は、一向に落ちつく気配を見せません。多くの友人が生き生きと仕事や恋愛に勤しんでいますし、尊敬する独身貴族の先輩方も多いので、焦燥感がなかなか高まらないのかもしれません。

ただ、帰省したときだけは、自分が子ども時代に取り残されたような感覚に陥ります。仕事の実績も取材の成功も、何の意味ももたない世界。もうすぐ中学校に上がる子をもつ同級生が、はるか遠い大人に見える世界。人は人、私は私。わかってはいるけれど、まるでパラレルワールドです。

 

安野モヨコの名作『働きマン』(第4巻、講談社)に、こんな一節があります。「こうして日常生活の中に突然放り込まれると 何もできなくて何も知らない そんな気がしてくる」――週刊誌の敏腕編集者として仕事に生きるヒロインが、友人の結婚式で物思いにふける一場面。おなじような経験を幾度も繰り返してきて、次は妹の結婚式を迎えるのでしょう。

人間はだれしも、経験したことしかわからないのです。それならば私はせめて、ブライズ・メイズの楽しさを伝えたい。週末に帰省をしたら、ひさしぶりに姉妹で夜通しガールズトークをする予定です。

 (2013年11月22日付「新潟日報」初出)