Salonette

Mai Takano Official Site

晴雨計 第19回 「続・柳都にて」

連載をスタートしてはじめてになる、新潟への帰省。ラ・フォル・ジュルネ新潟の打ち合わせのため新潟市文化政策課を訪れた私ですが、訪問にはふたつめの目的がありました。それは、2013年にオープンした「マンガの家」、そして「マンガ・アニメ情報館」を取材すること。開館の知らせを聞いたときから、「マンガと音楽の甘い関係」(太田出版)の著者として見過ごすことができないと注目していたのです。

 

マンガ愛あふれる学芸員Iさんに引率していただき、まず訪れたのは古町にあるマンガの家。2月開館。コンセプトは「マンガが生まれる家」です。ワークショップコーナーもある親密な空間に一歩足を踏み入れると、イヤミにおそ松くん、「ハイスクール奇面組」、「ついでにとんちんかん」の間抜作先生、そしてパタリロ……幼い私が大好きだったギャグマンガのキャラクターたちが出迎えてくれました。ギャグマンガだけで展示ができるってすごい。ギャグマンガ好きなのはジャンプ派の父のせいだと思っていましたが、案外、こうした土壌で生まれ育ったからかもと感動してしまいました。

つづいて、マンガ・アニメ情報館のある万代BPへ。こちらは5月開館。開放感のある空間に、マンガの「コマ」や「吹き出し」、「オノマトペ(擬音)」を意匠にしたモノトーンの巨大なインテリア。検索やライブラリーはもちろん、「うる星やつら」のラムちゃんと鬼ごっこできたりアニメのアフレコができたりと、体験コーナーも豊富。まるでマンガの世界に迷いこんだような気分が味わえるのです。高校時代のおしゃれスポットが、いまやおしゃれなサブカル発信基地に。時代と勢いを感じずにはいられませんでした。

 

10年以上の歴史を持つ古町5番町商店街の水島新司ストリートやドカベン犬夜叉バスなどで、おそらく市内の人々にはおなじみであろう「マンガ王国・新潟」。しかしまだまだ全国区ではなく、私ですら知らないことだらけでした。だからこそ、この取り組み――とりわけ子どもたちや、新たなクリエイターの育成に重きを置いている点をもっと発信していきたい。「お国自慢だから」ではなく、「マンガを愛しているから!」と高らかに叫べるような次世代を生み出してほしい。愛こそが、創作の源だからです。ワークショップやライブラリーの一層の充実を、心から願っています。

 (2013年12月6日「新潟日報」初出)