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【Art】暮らすように時を過ごす | 東京都庭園美術館「アール・デコの邸宅美術館」展

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東京都庭園美術館で開催中の「アール・デコの邸宅美術館」展内覧会へ(7/16)。

今回の展覧会は、旧朝香宮邸そのものを鑑賞する「建築をみる2015」展とコレクターたちが収集した名品を集めた「ART DECO COLLECTORS」展の2本立て。去る5月に重要文化財に指定された「アール・デコの邸宅」の在りしの姿を、オリジナルの家具や調度、カーテンを開いた窓外の風景とともに、暮らすように楽しめることが第一の見どころだ。

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《大客室》(松井写真館 1933年頃)

朝香宮家は1906年に創設された宮家。当主の鳩彦王は軍人として欧州留学中の1923年、フランスで交通事故に遭い足を大怪我して、長期療養を余儀なくされる。允子妃は看病のため現地に駆けつけ、夫妻はなんと2年あまりをパリで過ごすことになった。偶然からつづいたパリ生活の最後、1925年に開催された通称「アール・デコ博覧会」に強い影響を受けた夫妻は、帰国後にこの邸宅の設計を計画。1933年、アール・デコの邸宅が白金台に出現したのである。

おもしろかったのが、「アール・デコ博覧会」の人気パヴィリオンのひとつ「コレクター館」の逸話だ。アール・デコを代表する室内装飾家ジャック=エミール・リューマンが手がけたパヴィリオンで、画家や彫刻家、鉄工芸作家などフランスのアール・デコ作家が結集した期間限定の夢の館。この架空の館を、朝香宮夫妻は現実のものにしようとしたのだという。なんとも夢のある話!

散逸した家具や調度が集められた今回の展示もまた、夢のモデルルームのよう。

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当日は雨模様だったが、それもまた趣があった。冒頭の写真のようにゆっくり図録を眺めたり、佇んだり、ゆったりと暮らすように鑑賞したい空間だ。会期中の毎週金曜日は21時まで開館するので、夜の姿を楽しむこともできる。

もうひとつの見どころは、本館内で楽しめる写真撮影(平日限定)。香水塔のそばに佇んでみたり、

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ルネ・ラリックのガラスのリリーフを接写したり、思い思いの夏の瞬間を残すことができる。部屋のイメージごとに趣向をこらした壁紙や照明をコレクションしてみる、というのも楽しいかも。 

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新館では、日本のコレクター伊勢信彦、大村清一郎、松本瑠樹、3人のアール・デコ・コレクションが併せて展示されている。

「コレクター」は芸術の理解者、支援者の別名でもある。

たとえば当時のフランスの服飾デザイナーであり著名なコレクターでもあったジャック・ドゥーセは、前衛芸術とともにアイリーン・グレイの漆の衝立やポール・イリーブの椅子といったアール・デコの調度で邸宅を彩った。アール・デコが再評価されるのは1960年代以降だが、それ以前にドゥーセのようなコレクターが作家たちを支援したことは、欠かすことのできない事実なのだ。

アール・デコの邸宅美術館」展は9月23日(水・祝)まで開催中。美に魅せられたコレクターたちの情熱を感じにいきたい。

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www.teien-art-museum.ne.jp