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【Stage】花咲ける乙女道


長いあいだ、
「乙女の必須科目、タカラヅカをどうして観ないの!」
「宝塚“おとめ”なのに!」
マリー・アントワネットといえば花總まりなのに!」
という叱咤激励を受けてきた。おもに男性から。
ええ、みなさん、おっしゃるとおりでした。私は物心ついて20余年を無駄にしてきました。

……という内容のエッセーを書いた(『宝塚イズム』青弓社)。
題して「ガーリィ・タカラヅカへようこそ」。2008年は私の“タカラヅカ元年”となったが、その後の研究はまだあまり進んでいない。

きっかけは、『美人百花』2007年9月号の「美香ちゃんが水夏希さんに“愛をこめて”インタビュー」。
モデル・美香は1975年生まれ。
この雑誌の表紙レギュラーのほか、多くのファッション雑誌に登場している、“アラサー・カリスマ・モデル”のひとりである。
彼女は、観劇歴は浅いながらも、かなり本気の“ヅカ・ファン”。
タカラヅカは女性として人間として、成長できるチャンスを与えてくれる」
とまで語る彼女に引きずられるように、わたしは水夏希の『エリザベート』を観た。
以来、水夏希雪組・男役トップスター)に対する思慕が、どんどん高まってゆく……
そうして昨日観にいったのが、『君を愛してる―Je t'aime』(2月28日、東京宝塚劇場)。
なにしろジュテーム、である。
「愛している」ではなく、「愛してる」である。
チラシから、もう、乙女全開。

舞台は、20世紀――50年代頃だろうか――のパリ。
貴族の放蕩息子と、気が強く情に厚いサーカスの娘の恋。ザ“ラブ・ロマンス”な設定から、コミカルな(吹きだしの外の手書き文字のような)演技、舞台の色彩や着ている服まで、まるで初期の萩尾望都作品のよう。
ジョルジュ(水夏希)のボーダーのベスト、マルキーズ(白羽ゆり)のオードリー風ワンピース。
主人公のピュアお坊ちゃまな水より、二番手の悪役アルガン(彩吹真央)が男前に見えてしまうのは、少女マンガを読むときの私のクセ、そのままだ。
トップスターがいちばん魅力的なのは、やはりレビューのとき。ナマ大階段はまばゆい。舞台についてはまだなにもわからないが、音楽のよしあしはさておき、組子(キャスト)の一体感には感動を禁じえなかった。
一体感は観客にも及ぶ。礼儀正しく、オンタイムで進行していく、女性独特の清らかな世界。

帰りには水のブロマイドが印刷された「宝塚銘菓 炭酸せんべい」を購う。
幸福な余韻。これは、この余韻は、おいしい紅茶やネイルサロンのあとの“あのかんじ”である。
……ハマルかも。高価なDVDなど、どんどん集めてしまうかも。
「わたし、こうなることをどこかで予感していたのかもしれない。だから避けて通ってきたのかもしれない」
興奮して叫ぶ私に、連れは、してやったりというように頷いた。

(2008年2月29日「乙女のクラシック」初出)