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【Music】記憶の宮殿 | アレクサンドル・タロー『ジュノム』

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同志・小橋めぐみさんとのお茶会、先日はウィーン風味。

気になっていた銀座のオーストリア料理店にティータイムがあることを知り、ケーキセットで全6種類をいただいた。

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チョコレートが大好きだったハプスブルク家のケーキは見た目が地味だが、その深い味わい、独特の食感、そしてチーズケーキのなんともいえない後味に感動した。
紅茶はデンメアティーハウス、コーヒーはもちろんクリーム付き(わたしはモーツァルトリキュール付き)。
コーヒーを注ぐとき、お店の方が、シルバーのポットが駱駝をかたどっていること、これはオスマン・トルコから送られた和平の証のレプリカであることなどを教えてくれた。

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抑えめで品のある調度やBGMとともに、さりげないサービスのすばらしさにリピートを誓う。
イベント会場の下見も終えて、これからが楽しみ!

 

うれしかったのが、めぐみさんがブログで、プレゼントしたアレクサンドル・タローの新譜『ジュノム』を紹介してくれたこと。


小橋めぐみオフィシャルブログ「Comment allez-vous?」Powered by Ameba

前回一緒にいったMETライブビューイングにもハマってくれて、今度は事務所の方たちを誘って『カルメン』を観る予定だそう。こんなに響く友人、なかなかいない!

反響はあったが「おもしろかったよ!」と言ってくれるひとのなかった高野麻衣(と多くの25ans読者にとって)の2013年ベスト映画『ダイアナ』を激賞してくれた記憶も新しい……プリンセスや美容法や女の生き方といっしょに、音楽や本のおしゃべりができる幸せに浸っている。

 

最近、ラジオで話したり、CHANELのショートムーヴィーを観たり、こうしてケーキを食べたりしながら、ザルツブルクのレオポルト宮殿で過ごした十代のひと夏を思い出すことが多い。

ホームステイ先にザルツブルクを選んだのは、もちろんモーツァルトを愛していたからだ。

わたしを知ってくださった方に、「どうしてそんなにモーツァルトが好きなの?」と訊かれることもある。そんなとき、タローのモーツァルトは質問への答えに近い感情をわたしに与えてくれた。それはたとえば、こういうことだ。

モーツァルトがどれだけ無邪気であったのかは、演奏しだいとも言えるが、少なくともタローが愉快に戯れる相手としてのモーツァルトは、 そうイノセントな人間でもない。たとえば「ジュノム」の謎めいた名で知られてきた変ホ長調協奏曲……ここにいるのは……諦観もなにもかも予めもって生まれてきたかのような青年の不敵さなのではないか。――青澤隆明「生の水面を揺らめくもの」より

 

モーツァルトのある種の二面性を考えはじめると――肉体と精神(アマデ)ではないけれど、うずくような憧れと共感でたまらなくなる。男性への同化願望のあるわたしにとっては、恋と言うほかない、感情なのである。

もうひとつの美点は、その優美だ。モーツァルトはどんなときにも、その優美を崩さない。深い感情の吐露を、あくまでも美しい旋律とハーモニーにひそませる。

革命前のロココを生きた、精神の貴族。エレガンスの塊。それこそがわたしのモーツァルトである。 

ジュノム

ジュノム