Salonette

Mai Takano Official Site

カントリーロード

物語が好き。
図書館が好き。
猫をストーキングするほど好き。
バロン(声:露口茂)が好き。
追憶の、ドイツの恋人がいる老人が好き。
ヴァイオリン製作者になるため、15でクレモーナに渡る少年が好き。
(クレモーナ、というアクセントも好き。)
自分が何者かを知りたい。
恋も、作家の夢も、まだぼんやりした出来事だけれど、前進はしたい。
自分に似た同い年の少女に、すっかり自己投影した名残りはどこかにあって、いまでも観るたびに号泣。

しかもこの作品は、音楽的にもまさに「オトクラ」な内容をもっている!!
……という趣旨で、見返したのだった。
聖司の、ヴァイオリンを作る夢というモティーフがいい。
ほかにも、いくつかの古楽器まで登場する。
ヴィオラ・ダ・ガンバリュート、リコーダーにコルネットまで……

本読み乙女としても。
雫が夏休みの学校で、無理を言って図書室を開けてもらい本を借りるシーンがある。
このとき手にした本はモニカ・クリングの『フェアリーテイル』。
原作では聖司は、出会いざま、こうした“おとぎ話”を好んでいる雫をわざとバカにしたのだと記憶している。ちなみに画家を目指していて、どこか名家の次男坊だったはず。
それより、図書カードに書かれた名前で互いに興味を持つ、という心境。
いまの中学生にはわかりっこない。
公開当時も、プライバシー保護などの観点で貸し出しのバーコード化を進めていた日本図書館協会からクレームがついたらしい。
もちろんいまのシステムは便利だけれど、“「天沢聖司」=図書館の王子様”を実感できるのは、ちょっと得した気分だ。

小学生でも高校生でもない、中3の夏へのノスタルジーは大人になるとよくわかる。
当時は、朝焼けのシーンで雫が言う、
「自分のこと、前より少しわかったから」
というヘッセ的な、自我の成長こそが主題なんじゃないかな、と違和感があった。
でも焦りや背伸びと、そこから得た成長は、そもそもデミアンや聖司や千秋先輩がいたからこそのもの。
大人になるとわかることって、あたりまえだけれどたくさんある。
大人になることを、だからわたしは否定したくない。
宮崎駿による「カントリーロード」の詩が身にしみるようになったのも、家を出てから。
けれど、そうなることはどこかで、予感していた気がする。 

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