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Mai Takano Official Site

親仏家のためのアジェンダ 【映画編】

■公開中
ゼロ時間の謎
(L'HEURE ZERO/TOWARDS ZERO, 2007年フランス)

http://www.zerojikan.jp/

原作は、アガサ・クリスティ本人がマイベスト10に選んでいる『ゼロ時間へ』。
フランス人監督パスカル・トマによって、舞台はブルターニュのリゾート地へ。
ハンサムなテニスプレーヤーのギヨーム(メルヴィル・プポー)と、美しい新妻キャロリーヌ(ローラ・スメット)、2人の前に現れるギヨームの前妻オード(キアラ・マストロヤンニ)。
加えてダニエル・ダリューが叔母役で出演!!
先日紹介したプーランクの盤で〈愛の小径〉を歌っていた、御年90の大女優である。
室内の描写や小道具もエレガント。
キャロリーヌにはエルメスとラクロワ、オードにはプラダ、など衣裳のこだわりもツボ。
乙女クリスティ・ファンにとっての、見本のような映画がフランスで作られるというのは、とてもおもしろい。 

ゼロ時間の謎 [DVD]

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■公開中(2/9(土)~)
潜水服は蝶の夢を見る
(LE SCAPHANDRE ET LE PAPILLON, 2007年フランス)

http://chou-no-yume.com/

ELLE誌の敏腕編集長ジャン=ドミニク(マチュー・アマルリック)は目覚める。
そこは病室。自分が脳梗塞で倒れ、運び込まれたことをに思い出す。
しかし、自分の言葉が通じない。身体全体も動かない。
唯一、動くのは左眼のまぶただけ……
「感動の実話!!」などと喧伝されているが、『バスキア』『夜になるまえに』のジュリアン・シュナーベル監督だから、単なる闘病ものにならないことは必至。
予告編やスチールの美しさが、画家の知性と感性を伝えてくれる。 

潜水服は蝶の夢を見る [DVD]

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■3/8(土)~
『プライスレス 素敵な恋の見つけ方』
(Hors de prix, 2006年フランス)

http://www.priceless-movie.com/

『アメリ』風フレンチ・ラヴコメをお望みの向きに。
とはいえ本作のオドレイ・トトゥ、セクシー子悪魔だから要注意!!
玉の輿を狙うイレーヌ(オドレイ・トトゥ)は、高級ホテルで働く内気なジャン(ガド・エルマレ)を億万長者と勘違いし、一晩をともにしてしまう。
イレーヌに恋をしたジャンは彼女を忘れることが出来ず、コートダジュールまで追いかけていくが……
60年代のリゾート映画のように、エスプリのきいたオシャレ喜劇。
乙女なら、セクシーなのに下品にならない、イレーヌの着こなしも見習って。 

プライスレス~素敵な恋の見つけ方~ [DVD]

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■3/13(木)~
そしてこの時期、話題といえば「フランス映画祭」。
これまでは横浜で開催されていて、今年で16回目となる。
残念なことに東京・六本木と、大阪に会場を移してからは3度目。

映画祭で上映されるのは:
ランジェ公爵夫人」(ジャック・リヴェット監督)
譜めくりの女」(ドゥニ・デルクール監督)
アストレとセラドンの恋(仮題)」(エリック・ロメール監督)
「屋敷女」(アレクサンドル・バスティロ・ジュリアン・モーリー監督)
「Water Lilies(英題)」(セリーヌ・シアマ監督)
「秘密」(クロード・ミレール監督)
「ドーヴィルに消えた女」(ソフィー・マルソー監督)
「パリ」(セドリック・クラピシュ監督)
「暗闇の女たち」(ジャン=ポール・サロメ監督)
「食料品屋の息子」(エリック・ギラド監督)
サマータイム」(オリヴィエ・アサイヤス監督)
「娘と狼」(ジル・レグラン監督)
「ディディーヌ」(ヴァンサン・ディエッチー監督)
以上、最新フランス映画14作品。

また、映画祭の一環として渋谷ユーロスペースにて、ジャック・リヴェット監督10作品を上映する。
今年の団長は女優で映画監督(!)のソフィー・マルソー
 
「東京・大阪フランス映画祭2008」
13日(木)~16日(日)●TOHOシネマズ六本木ヒルズ
16日(日)~18日(火)●TOHOシネマズなんば
http://www.unifrance.jp/festival/index_pc.php
  
なんといっても巨匠、エリック・ロメールの新作アストレとセラドンの恋(仮)』に注目だ。
前作『三重スパイ』では第二次世界大戦期、前々作『グレースと公爵』ではフランス革命と、前世紀とは打って変わって歴史モノを描いてきたロメール
新作では、一気にローマ時代までさかのぼる。原作は、17世紀の小説家オノレ・デュルフェ による『アストレ』。
大河小説のパイオニアとも呼ばれる彼の、5000ページの超大作である。
ローマ時代、フランス(ガリア)中央部には、ローマ支配から離れて暮らす羊飼いの部落があった。
若きセラドンは、美しきアストレに恋を打ち明けるものの、アストレは心を開けない。
失意の末に彼は入水自殺を図るが、3人のニンフに助けられる。
精霊と司祭の助けを得て、セラドンは女性に変装し、再びアストレの前に姿を現す。
ラドンの死を信じて、アストレが嘆いていることを知らずに……

まるでギリシャ神話。
牧歌的な純愛を、美しい自然、城、優雅な衣裳とフランス語で織りなす。
ロメールの“現実離れ”の美学、ここに極まれり。
 
そうしてエリック・ロメールは、この『アストレとセラドンの恋』を最後に引退したい、と表明した。
小人数のチームでの映画制作のスタイルについていくには、87歳の監督は体力が足りないとのこと。
http://afp.google.com/article/ALeqM5iYB9xdKQBHhvOncifwXR90RzByQw

70代になろうが80代になろうが、オリーブ少女もかくやのみずみずしい映画を撮り続けていたロメール
どこかでロメールがこの世にいる限り、ずっと映画を撮り続けるように思っていた。
最後の作品では、あなたの魂に触れられるような気がする。
悲しいけれど、アデュウ。 
P.-S. ゆっくりと、小説でも書いてくださいね。