Salonette

Mai Takano Official Site

乙女のクラシック

あなたがいるかぎり

ルネ・マルタンの本を書き終えて、いま最後の校正作業に追われている。 この状況だからこそスケジュールは急ピッチになって、朝には送っておかないと、大切な戦友である編集者を困らせてしまうのに、おもうように進まない。 この、手元にある原稿に赤を入れ…

グッドガール強化月間

昨日は、小花の裏地のバッグを見つけた。 今日は、裾上げしていたキャメルのトレンチコートが届いた。 新しい靴はまだ見つかっていないけれど、日ごとに秋の気分が高まっていく。 秋のアイコンは、『17歳の肖像』のジェニー(キャリー・マリガン)に決定。 …

女王陛下のボンベイ・サファイア

そのホテルは、23室の小さなものだった。 地主が、自分の客をもてなすためのタウンハウスとして構想したのが、元になったらしい。 いまおもうと、オーナーは英国貴族になりたかったのかもしれない。 彼は馬が好きで、馬主であり、英国の建築とブラントンを愛…

ある四畳半神話

そうだ 京都、いこう。 と思い立ってからこの方、生活に本来あるべき張りが出てきたのである。 なぜ京都なのかといえば、お察しのとおり祇園祭(=池田屋)ではあるのだが、そこに輪をかけてわたしをかの地へと向かわせるのが折からの四畳半主義者たちである…

ディスカバー、日本の夏

司馬遼太郎、中原淳一あるいは四畳半の影響もあってか、最近はどうにも和に惹かれてしまう。 いっそうすものの着物を涼やかに着こなし日傘をさして歩きたいとすらおもうが、着付けができないので早々にあきらめ、簾をたらし風鈴を鳴らし冷たい緑茶をいれた部…

ボーイズライフ・アゲイン

使命感にかられ携帯電話を開くと、「以前のツイートは15日前」になっていた。 というのはよくある話(※前項参照)だが、それまでの二週間実益のあることなど何一つしていなかった、というわけでもなく、依頼の原稿、連載の原稿、恋人との喧嘩、様式美につい…

a Day in Our Life

ときどきネット世界に対して「逆ひきこもり」をしてしまうのだが、そういうときはたいていなんらかの命題に夢中になっている。 リアルでは仕事に出かけるしデートもする。 ただ、その隙間にディスプレイと向き合う暇があったら本を読み進めたいレコードを漁…

男の色気に酔うということ

あと5日。 映画の公開をこんなにも待ち望むのは何年ぶりだろう。 もしかしたら20世紀の末に、ヘインズの『ベルベット・ゴールドマイン』でシネマライズに日参したとき以来かもしれない。 ディズニーでもジブリでもない純然たる「アニメ映画」なのに、驚くほ…

あなたの世代へくちづけを

荷宮和子『宝塚バカ一代』(青弓社)を再読。 タイトルに大きく「宝塚」とあるが、この本はよくある「わたしの半生と宝塚」でも、もちろん「宝塚入門」でもなく、「女おたくとは」というテーマのエッセイ集である。 ひいては「男という生き物が、どれほど迷…

蒼樹紅のこと

『バクマン。』(大場つぐみ/小畑健、集英社JC)は、リアル出版界(少年ジャンプ編集部)を描いた物語でありながら、ジャンプマンガの王道―― ・ 能力を秘めた主人公と相棒との冒険の旅 ・ 強敵に次ぐ強敵(やがて仲間になる) ・ 友情努力勝利!!! ・ 冒…

なぜ乙女はオネエMANがすきなのか

2009年のベストセラーのひとつ『乙女の日本史』(堀江宏樹/滝乃みわこ、東京書籍)を読了。 くそう、おもしろいじゃねーか!というのが率直な読後感。 やられた、また出し抜かれたのだ、堀江組に。* 夏に書店ではじめて見たときは、また堀江ネエさんが「女…

トゥルーリリィ

12月4日に発売されたJILL STUARTのアロマキャンドル「true lily」のテスターを、高野チーフ(妹 ※リーダーから昇進)が持ち帰った。 「たぶんね、まいがすきな香り」 言うとおりだった。 摘みたてのように新鮮でイノセント、でも甘やかな香り。 リリーにべル…

メアリー・ブレアの色

矢川版アリスを読み返してから、ディズニーのアリスを見た。 いつも思うのだが、50年代のディズニー映画(いわゆるクラシックス)は異彩を放っている。 わたしのすきなディズニーはすべて50年代のもので、小さい頃に風邪をひいて寝込んだりすると、ビデオを…

クライバーの腕

ようやく雨が上がり、晴れ間。 風は冷たいが気分がいい。 ベートーヴェンを聴きながら、道玄坂を上がる。 オフィスのPCを起動すると、昨日取材させていただいた飯森範親さんからのメール。 こちらも送ろうとは思っていたが、先を越されてなんだか申し訳ない…

我思う、ゆえにBLあり

熱が下がらず3日ほど寝込んだが、頭痛がそこまでひどくなかったので、貪欲にインプット作業を続けた。 新書2冊、マンガ6冊、映画1本。* すべてが渾然一体になって、このフレーズが浮かんだ。 わたしはたぶん、世間一般が言うところの腐女子である。 しか…

三重の意味で故郷がない

わたしのすっきりしない、もどかしい、聞いて聞いて病はとどまるところを知らず、会社帰りにライターの片桐さんとドゥマゴでおしゃべりしていたら「ついでにクレーメルも聴いてく?」ということになった。 なんという僥倖。 ありがとうございました。 クレー…

ノンストップ紘子

そういえば昨夜のワークショップの記事、iioさんがぶらあぼに書かれたそうだったので、確認のためバックナンバーを探す。 これこれ、紘子が表紙のやつだ。 手にとると、表4まで紘子。 女性誌でよくある化粧品タイアップ表紙みたい。 でもいい。紘子ならいい…

リヨン・オケと子どもたち

昨夜は、ずっと応援しているSony Music Foundationの「子どもたちに贈るスペシャル・コンサート」へ。今年は大野和士&リヨン歌劇場管弦楽団のバレエ音楽なので、バレエ少女率が高い。 もちろん舞台で滔々とチャイコフスキーをやるわけはなく、ブレイクダン…

永遠の間ずっと

永遠に 美は神の素晴らしい姿を明らかにする 美よ 永遠に 神がその顔に鏡を当て、神は自分の美に見とれる 永遠に バクリ:《3つのラブ・ソング》op.96 なんという快晴。 ゆうべの嵐がうそのよう。 嵐のなか、編集Hの家に避難させてもらい、ホットワインを頂…

淡々と、ただ淡々と

いま読んでいる『音楽の聴き方』(岡田暁生、中公新書、2009)のなかに、思わず膝を打つ発見があった。 「そして」の接続詞より、むしろ「セミコロン(;)によってつなぐ」という比喩の方が似つかわしい音楽もある。…「彼は幸福だった(A); 悲しいこともあ…

師匠の背中

今夜見た銀魂(アニメ)は、最高傑作のひとつになるとおもう。 第180訓「大切な荷ほど重く背負い難い」。 先週の予告からそんな予感はあって、タイトルの毛筆もいつもより端正だし、新曲だし・・・過去話だし、まずいな、もうこれは泣いちゃうんだろうな、と…

夜想曲集

カズオ・イシグロ『夜想曲集~音楽と夕暮れをめぐる五つの物語』(早川書房)を読了。 遅くなった。 もちろん新刊のときに買ったのだけれど積んであって、というのも、最初の一遍を読んだだけでぐずぐず泣けてしまって、とてもじゃないが電車のなかで読めな…

わたしはシティー派

この齢になってあらためて自分のルーツを確信したときは、喜ばしいはずなのに空白の時間をおもうとせつない。 わたしのヒーローの原型は冴羽獠なんじゃないか、と気づいたのはわりと最近のことである。 銀魂を見ていた(見せられていた)友人が、 「銀さんの…

マンシーニの朝

快晴。 昨夜見た映画の気分を持ちこし、ヘンリー・マンシーニを聴きながら街を歩く。 ムーン・リバーもいいが、表題作ともいえるBreakfast at Tiffany's (ティファニーで朝食を)がすき。 仲直りしたホリーと「僕」が手をつないで、晴れた五番街を歩くシー…

小一時間ロストするんで

都内百貨店でメイクタッチ、2日目。 オペラピンクと甘い匂いとスイーツ女子に囲まれて仕事をしながら、移動、休憩と、一日中クイック・ジャパン(QJ)を読む。 もちろん読了。 昨夜、泣きながら旧友に電話し、ほんとうによかったね。まるでボクサーを支えて…

モーツァルト大好き

初校ゲラが到着。読み返しながら、たったひと月前の自分の言い分が気に入らない。 端的に言えば、人物のセレクトが微妙。 「名演奏家」のお題に異を唱えることに気をとられすぎて、ぼんやり思いつくままにすきな人びとを並べたようで、気づいたら内田光子や…

クオ・ヴァディス

「主よ、どこに行かれるのですか (Quo vadis, Domine?)」 「私が今からいくところに、あなたは今いくことはできない。しかし、後からいくことになる。」 ――ヨハネによる福音書 妹が買ったばかりの美しいペールブルーの手帳の写真を送ってきたので、わたしも…

ベリ、チャーミング。

もう一度髪を切り、黒に戻した。 髪は一度切ると、どんどん短くしたくなる。 不精ではなく、実は長いほうがいろいろごまかしがきくのでそれをよしとしない、とか、顔を隠したくない、とか、そういう精神的なものの影響が大きい。 なにより清々とする。 すべ…

悩ましく、ひどく、愛しい

小野不由美「十二国記」の新作を読む。圧巻。 万民の前に君臨する王や麒麟というモチーフ、息を呑むようなアクションやカタルシスもないままに、どうしてこんなにも深く、感情を揺さぶる一編が書けるのだろう。 どうしてこんなにも「十二国記」でありつづけ…

英国レディがゆく ~オーストラリア編

ロンドンに暮らす英国レディにとって、オーストラリアははるか遠くの野蛮な世界だ。 下層階級と同じ粗野な言葉を話す、荒くれものの金鉱掘りや牧童たち。 偏見は、事実上の独立を果たした1930年代でも変わることはない。 それでもレディ・サラ・アシュレイ(…