乙女のラ・フォル・ジュルネ案内2009
テーマがバッハでバロック三昧とくれば、全編オトクラ・レコメンドと言いたい今年のラ・フォル・ジュルネ。
すべてが聴けない大前提だからこそ、あえて“乙女的必聴”とするなら、という公演をとりあげてみた。
アーティストで気になるのがファニー・クラマジラン(ヴァイオリン)。
1984年パリ生まれの乙女(http://www.clamagirand.com/)。カジモトT様にいただいたナント土産が彼女のイザイ(右写真)だったのだが、冴え渡った音のなかの情念のようなものにゾクゾクした。
バッハも絶対に聴いてみたい!!
「シャコンヌ」は言わずと知れた名曲。ヴァイオリンが1台で演奏するスタイルが元で、のちにピアノやオーケストラ用に編曲された。
LFJはそうした編曲(トランスクリプション)を聴き比べることもできる、またとない機会。
■シャコンヌ
(無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番 BWV1004より)
無伴奏ヴァイオリン版 [382]
ピアノ版(ブゾーニ編) [155, 279]
オーケストラ版(齋藤秀雄編) [213]
アーティストつながりでいえばタチアナ・ヴァシリエヴァ(チェロ)。
女性チェリストというロマンティックさ――デュ・プレによるイメージ?もさることながら、LFJでは、日本が誇るダンサー勅使川原三郎とのコラボレーションが見逃せない。
無伴奏チェロ組曲もまたバッハの器楽作品の最高峰だが、1台の楽器の音の流れを視覚的なイメージでとらえるという試みは、音楽への造詣とはまた別物だ。
バレエ好きの方はもちろん、はじめての方こそ見てほしい。
■勅使川原三郎&タチアナ・ヴァシリエヴァ(チェロ) [157, 356]
J.S. バッハ:無伴奏チェロ組曲(全曲) (J.S.Bach : Six Suites pour Violoncelle / Tatjana Vassiljeva (Vc)) [2CD]
- アーティスト: タチアナ・ヴァシリエヴァ,J.S.バッハ,タチアナ・ヴァシリエヴァ(Vc)
- 出版社/メーカー: Mirare France
- 発売日: 2009/04/02
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かねてから「ピアノだいすき」宣言をしているマルタンだもの、鍵盤作品とピアニストの充実は今回もお墨付き。
まずはやっぱりゴルトベルク変奏曲をきいてほしい。
とある伯爵の眠れぬ夜をなぐさめるためにつくられた音楽。
オトクラではハンニバル・レクターの愛した曲としてしかご紹介していないみたい(参照)。それだけじゃないの、ということは、いずれゆっくり記事にさせてください…
■ゴルトベルク変奏曲 BWV988
チェンバロ版 [369]
ピアノ版 [132, 158, 228, 252, 326]
弦楽三重奏版(シトコヴェツキ編) [152, 332]
- アーティスト: レオンハルト(グスタフ),バッハ
- 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
- 発売日: 2000/06/21
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惜しくも公演はないものの、本日発売のアンヌ・ケフェレック(ピアノ)の新譜にもゴルトベルクのアリア(テーマのメロディ)が収録されている。
アルバムのタイトルは『コンテンプレーション―瞑想―』(キングインターナショナル、右写真)。
ブゾーニ、コーエン、シロティ、ケンプ、クルタークによる編曲を含む、バッハの名曲集である。
モダン・ピアノで紡がれる、バッハの祈りはまさに安息。毎晩のように聴いてしまっている、もはやわたしの精神安定剤。
(キングインターM様、心からありがとうございます…!)
静かな悲しみに満ちた宗教曲から、前述のアリアや「イタリア協奏曲」「主よ人の望みの喜びよ」や「シチリアーノ」という人気曲まで入っているので、来場の記念盤としてもどうぞ。
詩的でありながら凛と端正なケフェレックのピアノ、乙女の皆さんにはぜひ聴いていただきたい。
■アンヌ・ケフェレック(ピアノ) [257, 274, 353]
フレンチ・バロックが多いのも嬉しい。
特に、バッハの“文通ともだち”クープラン。
イド・バル=シャイや児玉麻里のピアノ、ベルトラン・キュイエのチェンバロによる鍵盤作品ももちろんだが、フランスのバロック楽団マレ・サンフォニーによる「諸国の人びと」はこの機会にぜひ。
まさにアントワネット的、ヴェルサイユの音楽。
■組曲「諸国の人びと」(抜粋) [127]
- アーティスト: レゾンブル,マルゴ・ブロンシャール,シルヴァン・サルトル,F.クープラン,J.S.バッハ,ベンジャミン・アラール(Org)
- 出版社/メーカー: AMBRONAY
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この機会にといえば、今回のLFJのすごいところは、“一大バロック音楽祭”でもあるところ。
日本はもとより世界中から、クラヲタも「おおお!!」となる古楽の一流演奏家や、「知らないけど気になる」新進気鋭が集まって、めずらしい曲もたくさん披露される。
だから実をいうと、だれが有名?とか、必聴はどれ?なんて気にせずとも、いきあたりばったりで聴いてもスゴイ体験をすることになるだろう。
わたしが楽しみなのは、まったく知らなかったブクステフーデの受難曲。
ラ・ヴェネシアーナという、これも未知の団体が演奏するのだが、試聴しただけで涙が出そうだった。
■われらがイエスの御体 [147, 246]
最後にはずせないのが、ミシェル・コルボ(指揮)。
オトクラ序文にも登場するわたしの神様である。
これも何度も登場する「マタイ受難曲」は、聖書の話を知っていても味わい深いけれど、知らなくても“感じること”ができるだろう。
なんて美しく、なんて官能的で、なんて切ない――
こころのなかの密やかな場所を、蝋燭の光のように灯す音楽。
バッハの宇宙に包まれてみてほしい。
■マタイ受難曲 [315]
- アーティスト: コルボ(ミシェル),ローザンヌ声楽アンサンブル,ノートル・ダム・ド・シオン教会少年聖歌隊,エクウィルツ(クルト),ファウルシュティヒ(ゲルハルト),マーシャル(マーガレット)
- 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
- 発売日: 2009/04/22
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※公演名の横の数字は公演番号の「目安」です。
チケットご購入の際は、下記の最新タイムテーブルを必ずご確認ください。
http://www.lfj.jp/lfj_2009/timetable/timetable.php