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わたしはシティー派

この齢になってあらためて自分のルーツを確信したときは、喜ばしいはずなのに空白の時間をおもうとせつない。
わたしのヒーローの原型は冴羽獠なんじゃないか、と気づいたのはわりと最近のことである。
銀魂を見ていた(見せられていた)友人が、
「銀さんの声ってコレ、神谷明?」*
とつぶやいたのがきっかけといえばきっかけだ。

ふたりの共通点ははっきりしていて、
・ 初登場時から最強(成長する存在=少年ではない)
・ 普段はやる気がなく、飄々としている
・ それでいて鋭く、きめるところはきめる
・ 新宿(かぶき町)の街に棲み、フリー稼業
・ 「心を動かされる事情」があった場合、依頼を引き受ける
・ 法で裁けぬ悪を撃つ
・ 相棒の怪力少女
・ 恋人は作らない主義(酒とキャバクラは大好き)
・ 天涯孤独と、戦いで荒んだ少年時代
・ さまざまな人物との出会いによって、擬似家族的な温かさを知っていく
とまあ、基本設定だけでこれだけある。

物語の構成にしても、全体を通しての伏線などはあるものの、依頼人・仕事の内容はその都度異なる短編という類似がある。
ジャンプ漫画は王道(ドラゴンボールやワンピースや)になればなるほど「効果線と引き」が命のバトル地獄になるため、そうでないことは大きなポイント。
なにより、わたしはアニメを夢中で見ていた。
どうして獠ちゃんの魅力に気づかなかったのだろう。

女好きすぎるから?
ヒロインの香がボーイッシュすぎるから?
実写のジャッキーがあんまりだったから?
たぶんぜんぶだ。
  
 
シティーハンター』(北条司集英社)は、ジャンプ黄金期といわれる80年代を担った一作品である。
わたしたちはちょうど小学校に上がった頃で、朝から「ロマンティックあげるよ」を歌って、休み時間には男子女子の境なく聖闘士星矢ごっこをして、国語の音読でふきのとうがもっこりと吹き出せば爆笑して、ついでにとんちんかん、家に帰ればいまのわたしと同年代だった父がジャンプを読んでいる(英才教育)。
そういう時代だった。

小公女セーラ魔法少女も好きで、星矢ごっこでアテナ役をやらされるのもまんざらではなかったが、ほんとうはアンドロメダの聖闘士になってネビュラチェーンをお見舞いしたかった。
女子はみんな悟空やブルマが好きだったけれど、わたしは当時二枚目として登場したヤムチャのほうが好きだった。
冴羽獠はもっと好きだった。
でもクラスのかなこちゃんが「ヤムチャがすき」と言って「おとこずきー」とからかわれていたので、わたしはほんとうは獠ちゃんがすきなの、なんて口が裂けてもいえなかった。
女の社会は、齢7つにして「女」なのである。
そうしてわたしの淡い恋は封印された。

大人になるということは、自分を知るということ。
ほんとうに好きなものを、好きと言えること。

この齢になったからこそわかることがある。
この齢になってもわからないことがある。
まあ、それが自分じゃないかということ。

 

シティーハンター (第1巻) (ジャンプ・コミックス)

シティーハンター (第1巻) (ジャンプ・コミックス)