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【Movie, Books & Music】海辺にて | 『ブルークラッシュ』『海のアリア』他

こんにちは、高野麻衣です。

よく意外だと言われますが、海辺の町で生まれ育った私は海が大好き。運動神経がないため万能とは言えませんが、マリンスポーツにだってチャレンジしちゃいます。「海の日」のきょうは、ウェイクボード挑戦中の逗子マリーナより、ガールズなマリン・カルチャーをお届け。

まずご紹介したいのは、夏休みも待ち遠しい7月にかならず観たくなる定番映画『ブルークラッシュ』(ジョン・ストックウェル監督、2002)。

ハワイのオアフ島を舞台に、サーフィン大会で優勝を目指す天才少女を描いたスポーツ映画。スポーツに恋に友情にがむしゃらなアメリカン・ガール(ケイト・ボスワース)。正しい青春ものという意味で、ノリ的には キルスティン・ダンストの『チアーズ!』に近い感じ。わたしはこれらを、同じくキキ出演の『ウィンブルドン』と並んで、”3大ガールズ・スポーツ・ムーヴィー”と呼んでいます。 物語的にはひと夏の恋よりも、ミシェル・ロドリゲス演じる親友たちとの友情と成長がメイン。個人的にはそれに加えて、ハワイの美しい海を堪能できるところが気に入っています。監督のこだわりか、どう撮っても美しすぎる自然のせいなのか、変幻自在のブルーと波の音が余韻となって残ります。 

公開当時は、オーランド・ブルームと交際中だったケイトに夢中でした。輝くばかりのヘルシービューティ。キャメロン・ディアス、キキ、レイチェル・マクアダムス……。ハリウッド女優いう意味では、わたしはこの手の”アメリカのお嬢さん”タイプが昔からほんとうに好きです。オッドアイの神秘も、ファッションSNAPで見る上品な着こなしセンスも健在のケイト。みんな大好きミランダ・カーより、わたしはいまでもケイト派だからね!  

ブルークラッシュ [DVD]

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さて、湘南といえばこのところの文化系界隈の話題は「海街Diary」(吉田秋生小学館)でしたが、わが神・萩尾望都が意外にも鎌倉派というのは、あまり知られていないかもしれません。

代表的なものが、『あぶない丘の家』と『海のアリア』。なかでも『海のアリア』小学館文庫)は鎌倉を舞台にしたSFでありながら、音楽的マンガとしても最高峰の、わたしのベスト・オヴ・萩尾望都のひとつです。

以前から主張しているように、萩尾望都の描く世界は、どこを舞台にしても一種のパラレル・ワールドのように非現実的な色彩を帯びます。ロンドンはパリのように華やかだし、パリはロンドンのようにシック。

八月の朝――ぼくらはヨットを出した そんなに遠くへ行くつもりじゃなかった

という描写からはじまる『海のアリア』もまた、鎌倉や逗子マリーナ、沖縄を舞台にしながらすべてが異国のようなあこがれをいだかせる。マリーナのマンションで食べるカップヌードルを“あこがれの物語フード”に昇華できる作家は、萩尾望都をおいてほかにいないのではないでしょうか。

まさに名は体を表すというか、彼女の描く世界は望都(=理想郷、ユートピア)そのものなのかもしれません。  

海のアリア (1) (小学館文庫)

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ところで今回、マリーナに向かう道中なにを聴くか、ぴんとくるものがなくて逡巡したのですが、導き出されたのは「サザンオールスターズにまさるものなし」というあたりまえすぎる結論でした。

過去の名曲群もさることながら、「雨上がりにもう一度キスをして」「神の島遥か国」など2000年代以降の、円熟から原点回帰したみたいなキュートな楽曲が私のお気に入り。歌謡曲らしいポップさや琉球音楽への傾倒に、原点である60年代のサザン・ロックやオールディーズのニュアンスが洗練というフィルターをかけ、土臭さを感じさせません。そういう意味では、萩尾望都のマンガと同じ作用が、彼らの音楽にはあるのかもしれません。

イントロから「あ、いいな」と思うとどれもサザン、という状況に、やはり王者はさすがであると痛感したのでした。 6月25日、デビュー35周年の活動再開を発表したサザン。8月には54thシングル「ピースとハイライト」のリリースと全国ツアーがつづきます。一度ライヴにも接してみたい。新たな希望を明日の糧に、観念して都内へ戻ることとします。 ああ、夏休みがほしい!  

 (「花園magazine」初出)