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【Life】恋人は6月に花咲く ~バラとともに暮らす3つのTIPS

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6月である。

春からすこしずつラジオ学習しているフランス語のテキストがバラの花。それだけで幸福なくらい、私はこの花がすきだ。

バラは6月の誕生花。季語も夏。でも、6月ときいて梅雨よりバラを連想するようになったのは、10代のころに出会ったロバート・バーンズの詩のおかげである。

恋人は6月に咲いた 赤い赤いバラのよう

恋人は調べも美しい 甘い甘い音楽のよう

この時期の英国はなんといってもバラの季節であり、この花は夏の――あるいは淡い恋のはじまりの象徴なのかもしれない。

バラという花の背後には、さまざまな物語の予感がする。女神アフロディーテも女王クレオパトラも、聖母マリアも薔薇を愛した。中世の薔薇物語や薔薇戦争、アンダー・ザ・ローズ(秘密)でうごめく政争までをも連想させる、最高に美しいものの象徴。

毎年のように見事なバラで愉しませてくれる近隣の奥様(深く感謝)のようにはいかないけれど、バラの身近で暮らしていたい。そんな同志のための3つのTIPSをご紹介しよう。

 

1. バラを食す ~フレンチ アフタヌーンティー

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紅茶でもバラ水でも、ラデュレのマカロンでもいい。バラのフレーバーを口にしたときの陶酔を、なんて説明すればいいのだろう。願わくば花だけ食べて生きていたい。以前ご紹介したグランド ハイアット東京テラスの「フレンチ アフタヌーンティー」では、実際にそんな気分が味わえる。

【Life】MY FAVORITE PINKS FOREVER~わたしのイケピンクLIST - Salonette

ケーキやサンドウィッチなどのプレートと、ヴェルサイユ宮殿にある王の菜園ル・ポタジェ・ロア(Le Potager du Roi)で摘み採られた新鮮なリンゴとバラを使ったNINA’Sの紅茶「マリー アントワネット」を楽しむことができるというもので、目にもおなかにも大満足の午後となった。

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右から、ストロベリーショートケーキ、マシュマロとマカロン、桃とピスタチオのトルテ。下段にはスモークサーモンと胡瓜、イクラにディルクリームを添えたのや、ハムとグリエールチーズがたまらないサンドウィッチ、そして2種のスコーンが並んでいる。

おしゃべりに夢中になっていると、フランス人給仕さんがあざやかなピンクのケーキをとりわけにきてくれた!

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 こちらは「オリジナル 1778 マリー・アントワネットケーキ」。クラシックなパウンドケーキにフランボワーズのジャム。散りばめられたエディブル・フラワーがたまらない。

ホテルのアフタヌーンティーのなかでは破格(2800円)なのにこのサービス。今度はゆったりした休日に、ロゼ・シャンパンをプラスするのもいいかも、と目論んでいる。「フレンチ・アフタヌーンティー」は、7月31日(金)までの提供だそう。

六本木のフレンチレストラン 「フレンチ キッチン」|グランド ハイアット 東京

 

ところで、ヴェルサイユの王の菜園ル・ポタジェ・ロア(Le Potager du Roi)では、契約企業が菜園に実る希少な果物やバラを使用した飲料や食品を広く提供している。NINA'Sオリジナルの「マリー・アントワネット ティー」はその代表格だ。

日本でこの菜園とコラボしている企業のひとつが、なんと和菓子の老舗・源吉兆庵。写真は、4月のイベントで差し入れにいただいた季節菓子「ヴェルサイユの風」である。

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花のつぼみを模した巾着に、菜園でとれた天然のフレーバーを使用したゼリーが入っている。可憐なピンクとグリーンのゼリーは、やはりリンゴとバラ。かみしめた瞬間の香りがほんとうに幸福だった! 赤はフランボワーズ。ヴィンテージの赤ワインのような色合いに、甘やかな口あたり。まさに、ヴェルサイユの風が吹き抜ける。

残念ながらこちらは販売期間が終了してしまったが、現在もコラボレーションは続行中。夏らしい「金魚」という題材にどんなフレーバーが潜んでいるのか、注目したい。

宗家 源 吉兆庵 オンラインショップ / 金魚

 

2. バラを聴く ~オペラ『ばらの騎士

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バラを歌ったすてきな歌曲は山ほどあるけれど、バラの音楽の頂点に君臨するのがリヒャルト・シュトラウスのオペラ『ばらの騎士』。これ、賛同してくださる人は多いんじゃないだろうか。この大好きなオペラの、大好きなプロダクションの再演を、2007年以来8年ぶりに鑑賞した(5/24 新国立劇場)。もちろんドレスもバラの花だ。

18世紀ウィーン。幕開けは、陸軍元帥夫人のロココ絵画のように優美な寝室。17歳の美しい貴公子オクタヴィアンと一夜を過ごし、朝のコーヒーを飲む場面から始まる。そこへ突然、夫人のいとこの不良中年オックス男爵が来訪。裕福な新興貴族ファーニナルの娘ゾフィーと婚約したので、しきたりどおり婚約者に「銀のばら」を贈る「ばらの騎士」を紹介してほしいという。元帥夫人はオクタヴィアンを推薦するけれど、時の移ろいに憂いを感じている。そしてオクタヴィアンに「いずれ私より若く、美しい人のために私のもとをから立ち去るでしょう」と話す。「そんなことない!」と否定したオクタヴィアンはファーニナルの館を訪れ、娘のゾフィーに銀のばらを贈る(ポスター参照)。すると案の定、ふたりは互いに一目惚れして……とにかく、すべてを悟った元帥夫人が高貴にしてかっこよすぎるオペラである。とくに、このプロダクションは衣裳が18世紀でなく、作曲された当時の20世紀初頭なのがポイント。モーツァルトの洗練にあこがれつつ、モダンで物憂げな音楽は、いわば甘美なノスタルジー。これについてはもうすこし追記する予定。公演は明日、4日(木)まで。

ばらの騎士 | 新国立劇場 オペラ

 

3. バラと祈る ~Silent Music

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5月の最後の週末、ひさしぶりにSilent Musicへ伺った。

【Art】あなたがそばにいたら | Silent Music「Angel」展 - Salonette

Silent Musicは「心を澄ますと聞こえてくる音楽」をテーマに、ピアニスト久保田恵子さんが主宰する密やかなサロン。隠れ家のような中庭にはバラの花が咲いている。

この日は恵子さんがお誘いくださった特別な音楽会だった。展覧会のときとはまた別の、ピアノの音とキャンドルの灯りだけの空間。演奏されたのはモンポウアルヴォ・ペルト、サティ、ピアソラシューベルト、そしてバッハ。恵子さんの愛する密やかな祈りの音楽たち。これを恵子さんは「奏でる静けさ」と呼ぶ。美しすぎて、終始泣きそうだった。

そんなわたしをみて恵子さんは「そんなに毎日感動ばかりしていて、だいじょうぶかしら」と少女のように笑う。恵子さんに日々の情熱が届いていること、それを肯定し、見守っていただけていることがうれしくて、一層感極まってしまった。

演奏のあとで、ピアニストみずからおもてなししてくださったワインとバラ水、手作りのサンドウィッチやフルーツ。宴の後の厳かなテーブルを、ご一緒したアクセサリー作家・中田眞紀さんが撮影してくださっていた。

makibijou.exblog.jp

 美しい人々と過ごした密やかな夜。この日感じたさまざまな思いや祈りを、きっと忘れない。バラの花を見るたびにかみしめている。

silent-m.com