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【Music】森と白鳥の音楽祭 | ラ・フォル・ジュルネ新潟2016

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ラ・フォル・ジュルネ新潟2016「ラ・ナチュール 自然と音楽」が閉幕。あっというまの3日間!

今年は初の関連イベント「ナチュールラウンジ Supported by FM PORT」に出演させていただいたため、人気DJ遠藤麻理さんとともにたくさんのお客様とふれあえて、一層身近に故郷を感じることができた。

29日には「春の祭典」公演直後の児玉麻里さん、児玉桃さんが駆けつけてくださり、姉妹による2台ピアノ“以心伝心”エピソードや、アドバイスをしてくれた麻理さんの夫君ケント・ナガノの「春の祭典」がニジンスカヤ(伝説のバレエダンサー、ニジンスキーの娘)直伝という裏話を伺い大興奮。

また同日には、新潟初上陸のモディリアーニ弦楽四重奏団をリコメンドしている途中、偶然チェックインしたばかりの本人たちが通りがかって手を振って拍手に応えてくれるというミラクルも!

あたたかく熱心に聴いてくださったみなさま、また、拙著を購入し会いにきてくださったみなさま、ほんとうにありがとうございました!

 

今回は、0歳の姪がハンガリー・ジュール・フィルによる「白鳥の湖」【211】でコンサートデビューをした記念すべき年になった。春の陽射しのなか家族で出かけ、ガラス張りのナチュールラウンジでピクニックも。

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フォルジュルネ新潟の名物であるお弁当は、にいがた野菜とお稲荷のBOX(手ぬぐい付)。東京からの移住組も含む若いメンバーが運営する「そら野テラス」も気になる存在になった。

http://solatela.com/

 

30日はステージが午前中で終わったため、その後の6公演をはしご。ランチを食べるまもなく、音楽をおなかいっぱい味わい尽くす一日になった。

まずは、【311】宮川彬良&アンサンブル・ベガ、鈴木愛美、新潟市ジュニア合唱団による「音楽の自然食品」。

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©KAJIMOTO

アンサンブル・ベガは関西が拠点ながら、今回の新潟でフォルジュルネ初登場。これまで10年つづいたりゅーとぴあでの活動が、新たな展開につながった。観客には常連が多く、アットホームな雰囲気。

8人の名手によるベートーヴェン「田園」や、長岡出身のソプラノ愛美さんによるグリエール「コロラトゥーラ・ソプラノと管弦楽のための協奏曲」はもちろん、ジュニア合唱団による市民ミュージカルの代表曲メドレーがすばらしかった。

少年少女のまっすぐな歌声の、倍音の少ない澄んだ響きは、それだけでひとつの芸術品だと思う。故郷にこのようにハイレベルな合唱団がいて、ミュージカルスターを夢見る高校生もいて……と知ることができたのもまた収穫だった。

なによりも、“アキラさん”のMCがすばらしい。

「自然の分身が自分です」「(曲の途中の拍手ハプニングに)音楽は物理学ですから、ジャンってなったら拍手したくなる。それが自然なの」などなど、観客に寄り添いながら深い哲学を語ってしまう。人気にも納得。大いなる刺激になった!

 

つづいて【332】は、大好きなモディリアーニ弦楽四重奏団フランク・ブラレイ(ピアノ)、そして小千谷市出身の渡邉玲雄(コントラバス)によるシューベルト「ます」。

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フォルジュルネではおなじみのメンバーだが、だからこそ息があった音楽の洒脱なエレガンスといったら! 牡蛎と白ワインがほしくなる「ます」という初体験。はじめて聴く曲のような感動を味わい、やっぱり彼らの音楽が好きだと確信した。

会場には、おそろいのセーラードレスを纏った姉妹の姿も。しっかりもののお姉ちゃんとおしゃまな妹。

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お母様に伺うと、ピアノとリトミックを習っているふたりは0歳から通っているフォルジュルネ・ファンなのだそう。このあと、チューリップの「花あそび」で花冠をつくって会場をスキップするもとても目立っていた。これぞ新潟、というかんじ!

 

0歳コンサートのアンバサダー花野古町(はなのこまち)ちゃんとツーショットしているのは、 【312】公演でファリャの交響的印象「スペインの庭の夜」を披露したルイス=フェルナンド・ペレス(ピアノ)

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©KAJIMOTO

普段はこんな笑顔で人当たりのいいペレス。ピアノに向かったとたん静けさを湛え、官能的な音を紡ぎだすことに、毎回新鮮な驚きを感じる。

とくにソロでアンコール演奏したショパンノクターンcis-mollは、会場が息をのむほどの集中力。「1曲じゃ足りない、もっと聴きたい」という声をたくさん耳にした(もちろんソロ公演は完売)。

同公演では、大活躍のハンガリー・ジュール・フィルがラウタヴァーラの鳥と管弦楽のための協奏曲「カントゥス・アルクティクス」も披露。楽器で奏でられることの多い「鳥の声」を、あえて「採集した実物の鳥の声の録音」で演奏するという前代未聞のコンチェルト。CDで聴いてもめずらしいが、生演奏ではオーケストラが「鳥の声」を聴きながら“鳥待ち”しているようすなどもわかって、とてもおもしろかった!

 

「鳥の声」といえば【333】ジョニー・ラス&ジャン・ブコーシャニ・ディリュカ(ピアノ)、スタニスラフ・ポデムスキ(ヴァイオリン)による「森と鳥人のファンタジー」。

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モーツァルトにはじまり、シューマンドヴォルザークグラナドスなどの「鳥の音楽」を演奏するステージに、黒いシックなスーツを着た“鳥人”が現れる。

あまりに巧妙な鳥の鳴きまねに最初は驚きの声と笑いが起こるものの、音楽にあわせた優雅なダンスのようなパントマイムで、いつのまにかファンタジーの世界に惹きこまれていく—―これもまた、はじめての幸福なスペクタクル!

とくに、ラストの愉快なロッシーニ泥棒かささぎ」序曲(ドラマ「SHERLOCK」でモリアーティが聴いていたあの曲!)では、有名な主旋律に合わせてかささぎが鳴き出す。これまでただの「メロディ」と思っていたものが、こんなに巧妙にかささぎの声を模していたなんて!

 

こんなふうに一日中「鳥の声」を聴いていると、自然とそれを意識するように。

【313】で、今年のメインでもある超名曲ヴィヴァルディ「四季」を聴いたときも、アンナ・マリア・スタシキェヴィチ(ヴァイオリン)が奏でるメロディがしっかり「鳥の声」に聞こえてくることに驚いた。

f:id:otome_classic:20160501105403j:plainエメラルドグリーンのドレスに裸足のようなバレエシューズで、森の妖精のように登場、ステップを踏みながら演奏するアンナ・マリアの愛らしさも特筆もの。私の写真ではまったく捉えきれていないが、若き日のシャーロット・ランプリングを思わせる小鹿のような美女。しかし音楽はキレキレ!

キレキレといえば、能楽堂で奏でられた【324】モディリアーニ弦楽四重奏団の十八番、ドヴォルザーク「アメリカ」もすばらしかった!

第一ヴァイオリンが急病で交代ということでドキドキしていたが、もともと仲のよい友人ということで、息もばっちり。能舞台という親密な空間の緊張感もあって、最高にエキサイティングなセッションを披露した。

 

新潟のフォルジュネは、最高の音響を誇るコンサートホールとそのほかの会場を交互に聴くと、最高8公演を楽しむことができる。その間隔は30分。「ほぼひとつの建物だし、余裕余裕」と思っていたが、駆け回っているまに日が暮れた。

ひさしぶりにフォルジュルネ(はちゃめちゃな日)らしい、幸福な一日だった。

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コンサート終了後、次のプログラムを探しにいく観衆を見るのがフォルジュルネの密やかな楽しみ。「もっと聴きたい!」という渇望を、手助けしたいといつも思う。

新潟での開催も7回目になって、私の新潟での仕事も7回目。年々、故郷への愛着が増していくのを感じている。

幼いころから身近に感じていた白鳥たちの存在が、新潟生まれならではだと知ったのも今回がはじめてだった。

サッカーチーム、アルビレックス白鳥座の星の名前だったり、そのホームスタジアムが「ビッグスワン」だったり。寒い季節になると飛来して声を聴かせ、雪の積もった田園で餌を食べている白鳥たちは、新潟の身近な風景だ。

私も幼いころから、近くの大池にお散歩に行った。

あの「白鳥の声」が懐かしい故郷の音だと気づいたのは、ジョニー・ラス&ジャン・ブコーらのコンサートのアンコールのとき。

サンサーンスの「白鳥」の演奏に合わせて、白鳥がやってきて飛び去っていくあの声を、彼らが演奏してくれた。私はそれを、新潟の人びとへのプレゼントのように感じ、切なくて涙があふれたのである。

 

「ラ・ナチュール 自然と音楽」。私たちは自然を身近なものだと思っている。だからこそ、とても親しみやすいテーマだと思っていた。

それが、これほど発見と驚きに満ちたものになるとは—―ルネ・マルタンの着眼点に、あらためて敬服した。

発見と驚きの日々は、東京へと続いていく。

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lfjn.jp

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