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続 I'm Traveling

ヴァカンス映画といえばフランスとイタリアの独断場ですが、私はわりと、本国人の作品よりアングロ・サクソン系監督が撮った作品のほうが好きです。
エリック・ロメールは別格だけど!)
ソフィア・コッポラが切り取った東京や、チャン・ツィイーの芸者姿も通じる“ファンタジー”があるからかも知れません。
外国人が観たいと思う、外国の色あい。

プッチーニのアリアも印象的な『眺めのいい部屋』('86)は、西海岸生まれなんて信じられないジェームズ・アイヴォリー監督による、“ザッツ・ヨーロッパ”なヴァカンス映画。なんとなく「イタリアに行けば人生が変わる」と憧れ、ベートーヴェンの「テンペスト」を弾くことでストレスを発散する、抑圧されたヴィクトリアン英国令嬢を見事に描いています。
ああ、白い麻の服を着て、日傘をさしてフィレンツェを歩けば、ハンサムでエキセントリックな英国男子から熱烈なアプローチを受けるかも! 

眺めのいい部屋 HDニューマスター版 [DVD]

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原作はE.M.フォスター。しかしこの手の小説&映画化といえばヘンリー・ジェイムズも負けてはいない。
シビル・シェパード主演の『デイジー・ミラー』はまだ観たことがないけれど、『鳩の翼』では、沈みゆくヴェネツィアではかなげに死んでゆくアメリカ令嬢(アリソン・エリオット)が美しくて号泣しました。

鳩の翼 [DVD]

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若く豊かなアメリカ令嬢(新大陸)と退廃したヨーロッパ社交界(旧大陸)の対立は、ジェイムズの十八番。
アイヴォリーの最新作『ル・ディヴォース』も、ケイト・ハドソン(大好きな“お嬢さん”系女優)姉妹とシャルル=アンリの実家の関係がとってもジェイムズちっく。
アイヴォリーならさもありなんの、ステキ☆パリ・ガイドです。

ル・ディヴォース/パリに恋して [DVD]

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イタリアの避暑地と英国の令嬢は、オスカー・ワイルドにも登場します。
といっても、『ウィンダミア卿夫人の扇』映画化のための翻案で。この『理想の女』は、夏になると“ロンドン社交界がそっくり引っ越してくる”アマルフィ海岸の景色、ご婦人たちの服飾品、そしてミセス・アーリン(ヘレン・ハント)の機知こそが見所。スカーレット・ヨハンソン、作品選びとかは好きなんだけど……
理想の女(ひと) [DVD]

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最近そのヨハンソンにくびったけなのが、大御所ウディ・アレン(そう、だから作品はいいんだけど……)。
彼のニューヨークがカッコいいのは当然として、夏はヴェネツィア、クリスマスはパリで過ごす、パークアベニューの上流階級を描いた『世界中がアイラヴユー』('96)もとってもラヴリー!
ドリュー・バリモアナタリー・ポートマンも、ジュリア・ロバーツまでが歌って踊るミュージカル。
美術史家のロバーツが好きなヴァカンス先として挙げるのは、ボラボラ島
ジョギングを欠かさず週1セラピーに通う、当時のインテリとしてはヒップなセレクト(という皮肉)だったのですが、現在ではわりとポピュラーに。
彼らにとって「秘密の保養地」はステイタス。アカプルコイビサも、だれかにかぎつけられるたびoutになってしまうのですから大変です。
新たな秘境を探す、それが彼らの仕事だから仕方がない!
 
そんな、ニューヨーク上流階級orインテリばかり描き続けてきたウディが、『マッチポイント』で取り上げたのが、ロンドンと英国貴族。
この映画もおもしろかった!
ベルベット・ゴールドマイン』('98)以来の、ジョナサン・リース=マイヤーズ会心作。こういう屈折した役、似合うんです。さすがウディ、わかってる。
独特の曇り空のロンドンは、ヴァカンス映画の範疇からは外れるけれど、ついつい、書きたくなりました。 

マッチポイント [DVD]

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