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ヘンデル・イヤーは来年です


そもそも「ヘンデル・フェスティバル・ジャパン(HFJ)」は、没後250年となる2009年を目指して、(なぜか)2003年から行われている。
東京オペラシティが開館10年を記念して3年がかりで始めたのも、
バッハ・コレギウム・ジャパンBCJ)2007→2009ヘンデル・プロジェクト」。
http://www.mde.co.jp/doc.id?id=20071012143420268
ちなみに来年は、ハイドン没後200年で、メンデルスゾーン生誕200年でもあるが、ヘンデルのメモリアルはやはり扱いが大きくて、専用のスレッドが立っているくらいだ。

■一瞬の、ひらめきの…
ヘンデルはかように愛されている。
私もヘンデルが好き。
ではどのへんが?
訊かれても、言葉にするのは難しい。
……なんでもそうだけれど、特にヘンデルはとりとめがないのだ。
そんなときに思い出すのは「オンブラ・マイ・フ」であり、波多野睦美の言葉である。
「このメロディは、ヘンデルのなかに一瞬、ふっと湧いたものだと思うの。
バランスが完璧でしょう?
美しい、木陰の風と光を、誰もが想像できる」
愛される曲には、やっぱり理由がある――そういう趣旨だったと思う。
私がぴかぴかの新人だった数年前の、インタビューでのことである。

オラトリオを聴けばわかるように、ヘンデルは音だけであざやかな情景を描く。
「劇場人」と呼ばれるように、ドラマを作りつづけた人でもある。
しかし、まず第一に清冽なメロディを愛した人なのではないか、と私は思う。
ヘンデルが、自然な歌唱を弁護したのことは歴史的に有名だ。
カストラートのためにも作曲したが、同時に“もっとも自然な”バスのためにも、美しい曲を残した。 

だから、アンコールにホロリとさせられることが多いのかもしれない。
冒頭のエリック・ハイドシェックにしろ、アンヌ・ケフェレック(右上)にしろ、カプソン兄弟にしろ、なぜかフランス人アーティストが多いのだが。
ヘンデルのシンプルな曲を、アンコールに、はらりと聴かせてくれたときの至福!
この、「はらり」が重要である。
そこにこそ、ヘンデルの魅力が隠されているかもしれない。

一方、フランス人アーティストとの関わりも気になる。
これは目下の私の研究課題である。
 
■[乙女セレクション] 最近のヘンデル・アリア集
 イアン・ボストリッジ(T)
ビケット(指揮)オーケストラ・オブ・ジ・エイジ・オブ・エンライトメン

「ボス様がヘンデル出したよ」 と何人の人に言われたか!
ついについに、大切なヘンデルのアリア集が実現したのね、イアン。(※妄想)
英語、イタリア語によるオペラとオラトリオからのアリアで、彼の声で聴く「オンブラ・マイ・フ」もまた、絶品だ。
もちろんライナーノートは本人筆。
今後、ヘンデルを含むバロック・アリア集を計画し、ヘンデルについて執筆中だという。 

オンブラ・マイ・フ~グレイト・ヘンデル・アルバム

オンブラ・マイ・フ~グレイト・ヘンデル・アルバム

 

  
 マグダレナ・コジェナー(MS)
マルコム(指揮)ヴェニス・バロック管弦楽団

コジェナーはやっぱりバロック
彼女初のヘンデル・アリア集を聴いて、嬉しくなる。
“復活”なんて言いすぎかもしれないが、本領に戻って自由にさえずっている感じ。
表題の"Ah! mio cor"(ああ、私の心よ)が、象徴的だ。
もちろん、さらりとこなす技巧、言葉へのセンスといった才女ぶりも健在だが、この心地よさは、聴いて感じてほしい。
35才。女の人生、仕事ぶりの先達としても、やはり目が離せない。 

Ah! mio cor (Handel Arias)

Ah! mio cor (Handel Arias)

 

 
 ダニエル・ドゥ・ニース(S)
クリスティ&レザール・フロリサン

一方、28才の新星も登場。
2005年のグラインドボーン音楽祭で上演されたヘンデルの歌劇≪ジュリオ・チェーザレ≫で、クレオパトラ役に抜擢された本格派だ。
同い年だし、“クリスティの秘蔵っ子”イメージのソロ・デビュー盤を聴いて「!」と思ったし、気づくと方々で評価上々だったので、応援態勢だったのだが……
ネトレプコにつづけ!」なアイドル系PRにいささか落胆。
『スウィート・ディーヴァ』って…… 

まあ、ブランディングも大切なのだ。
Danielleのサインのiの上の“・”を“♪”にするテクは、いただき!
3月、サントリーホールのホール・オペラ(R)≪フィガロの結婚≫で来日予定。スザンナ役。
http://www.suntory.co.jp/suntoryhall/sponsor/080306.html