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小一時間ロストするんで

都内百貨店でメイクタッチ、2日目。
オペラピンクと甘い匂いとスイーツ女子に囲まれて仕事をしながら、移動、休憩と、一日中クイック・ジャパン(QJ)を読む。
もちろん読了。
 昨夜、泣きながら旧友に電話し、ほんとうによかったね。まるでボクサーを支えてきた妻だね(言い草が)。となだめられ、
「あしたはちゃんとまっすぐ歩くんだよ」
と言いつけられたのだが、はたしてまっすぐ歩けていただろうか、自信がない。
  
空知英秋のインタビューに関してはすでにジャンプの大西さん(当時担当でQJにあこがれていた張本人)による「約3万字インタビュー」があったので、わりと知っている話題ばかりかと思っていたのだが、やはり空知自身が文章として書下ろすと、これがぜんぜん違う。
もちろん、基本少年誌の赤マルジャンプと大人向けサブカル誌の違いはあって当然なのだが、なんというか、やはり空知といえばシャイなので、推敲した文章(ネーム)のほうがすっぱだか感がするのである。
とりあえず志村けん新選組への思いはたしかに伝わったよ空知。

あらためて言われると深くうなづけるようなことばも山ほどあって、「ふざけるときほど真剣にやる」とか「将来(さき)の道に点々と落ちていくような、そういう涙が書ければ」とか、あとくりかえし語られている父の存在は空知にとって大きいのだろうな、とか思う。  
 
ジャンプマンガの新潮流としてのマジメな考察もあって、感無量。

銀魂の主人公はたしかに「変化(=成長)しない」。
吉田大助は、空知が銀さんの攘夷志士時代を描かないこと、“「すべてが終わった後」の時間軸”であることにこだわっていて、わかってはいたけれどそこが切り口になるのは新しく、QJぽかった。 

銀魂』がめいっぱいの笑いの中にちりばめているのは、(古き良き)過去の存在を肯定したうえでの、今いる場所の肯定だ。失敗や弱点を抱えたうえでの、今の自分の肯定だ。・・・「終わった」世界で生きている銀さんの物語が、「今」への肯定感をそのつど見いだしながら、終わらず続く。そのこと自体が、『銀魂』を価値づけ、読者を勇気づける。

世の中捨てたモンじゃないよね、という感覚。
無理にがんばらなくても、成長だ信念だと肩肘はらなくても、日々は愉快だし、やるときはやるよね。
それが人生だよね、といまのわたしは思っている。
1979生まれはロスト・ジェネレーションなのだそうで、ロスト・ジェネレーション1920年代パリのヘミングウェイガートルード・スタインの会話(You are all a lost generation.)のイメージしかなかったわたしはいまさら驚いたのだが、なんで? 就職氷河期だから?と腑に落ちない。
こればかりはQJ、ちょっと陳腐と思った。
そんなロスト・ジェレーションいついての空知の答え。 

急に『クイックジャパン』くさくなりましたね。えーとね、ロストジェネレーションのことは話すと長くなるんでとりあえず横に置いときましょう。小一時間ロストするんで。いや、わかんないとかじゃないですよ。
 (「この時代に『銀魂』を書く必然性」を語ってしんみりしたあとで)
ちょっと話が長くなりすぎたんで、ロストジェネレーションの件はまた次の機会にしましょうか。いや、わかんないとかじゃないですよ。

空知先生、大好き!