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男の色気に酔うということ

あと5日。
映画の公開をこんなにも待ち望むのは何年ぶりだろう。
もしかしたら20世紀の末に、ヘインズの『ベルベット・ゴールドマイン』でシネマライズに日参したとき以来かもしれない。
ディズニーでもジブリでもない純然たる「アニメ映画」なのに、驚くほど、あのときの感情と差異がない。

たとえばTOHO CINEMASのカルチャーマガジン「T. 」。 銀さんと玉木宏とのW表紙。もちろん、アニメのキャラクターとしては史上初だ。*
クイックジャパン太田出版)も、再び特集を組んでくれた。
アニメ誌もそろっての表紙&巻頭特集、他局でのTVスポット放映やメーカータイアップなどが展開し、一気にメジャー感が高まる。
あくまで年長の人気作品を立てなければならないジャンプ本誌や、出版社間の取り決めや金勘定が丸見えの通常の業界の扱いではわからなかった本音、「みんな実は銀魂のこと好きなんだ感」が、いやがおうにも気持ちを盛り上げる。
インディーズバンドのメジャーデビューに戸惑いつつ、巻き込まれているような気分。

銀魂の露出が増えて思うのは、「少年ジャンプ」だからこその少年少女の熱狂的なファンは当然大切にすべきだけれども、それだけじゃなくて、キャラや人気声優じゃなくて作品そのものを愛する大人たちの語る場所があるのっていいな。ということ。
なんだかそういう場所では、空知先生も高松監督も杉田さんも二割り増し素直でいいな。と。
だから銀魂の音楽や歴史背景、そして空知英秋とわたしたちの時代について語りたい。
題して、「銀魂R25 (いやいやいや、そうゆんじゃないから)」(全5回予定)。
  
 
さて、坂田銀時という主人公がどれだけわたしのツボをついてくるかに関しては何度も書いているので割愛するが、結局のところいつも、彼のダメさかげんがたまらなく好きだという結論に落ちつく。
そんななか、最近仲間内のキーワードとして浮上したのが「だめダンディズム」(C)A.M。
ダメといってももちろん、ダメんずのダメとはまるで違う。
自分の人生を自分で引き受けている前提があるからこそ、ダメさも魅力になるというほどの意味である。

銀さんのダメさは天然パーマに始まり、死んだ魚のような目、常にけだるい仕草、やる気のない発言(下ネタを多数含む)、実は説教くさい、実は足がくさいなどがある。
それ以前に、三十路手前なのにほとんどプーとか常に金欠とか糖尿病寸前とかどうかという意見もあるが、この際どうでもいい。
肝心なのは、そういう人間くさいオッサンのため息のような愚痴のような科白が、時に胸をつくこと。
かつての“白夜叉”としての闘争とその挫折はもちろん、そういう過去を内包しながら、過去に固執せず、飄々と日常を生きる態度。
それが揺らぐときの色気=ダンディズム。
  
 
ときどき、銀魂はやっぱり時代劇なんだ、と思う。
イメージは必殺仕事人。鬼平でもいいが、なんとなく仕事人。
なんでかというと、

・ 基本的に短編
・ 基本的に引きがない
・ 基本的にゲストキャラはレギュラー化しない
真選組は、どれだけ人気があっても飾り職人の秀(脇エピソード)
・ 主人公がけだるい
・ 主人公の懐がでかい
・ 主人公に男の色気がある

始めと終わりは決まっていて、通るパタンもあって(だから安心して読める)、でも途中の展開が読めない(だから面白い)。
パタンが決まっていて、日常がつづいていくのは時代劇に限ったことじゃなく、寅さんでもルパンでもシティーハンターでも同じなのだが、まあ、わたしはこういう物語、主人公に昔から弱いのだ。
きっと空知先生もそうなんだろうな、といつも思っている。
かといって、銀さんはそんな主人公たちと似ているようでだれとも違う。
そうでなければ、これほど特別に惚れこんではいないはずだ。
結局、好きすぎてうまく語ることもできないまま、わたしは今夜も銀魂を流している。
 
 
 
http://wwws.warnerbros.co.jp/gintama/ 

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 * TOHO CINEMASでしか売っていないから、ひと月前から気になって気になって、ようやく用のない劇場に足を運んで手に入れてきた。少し前まで異例の品切れ状態だったという。

小栗旬宮崎あおい、キムタク、ケン・ワタナベなど錚々たる顔ぶれ(歴代表紙)に銀さんが加わっても、違和感がない。
空知英秋の最新ロングインタビューや宇野常寛によるレビューが掲載された「T. 」、実は読みごたえも十分。