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【連載】Febri「アニメファンのためのマンガ案内」第3回『薔薇王の葬列』

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カルチャーマガジン『Febri』(一迅社)でのコミック・リコメンド。

「アニメファンにも読んでほしいマンガ」をテーマに、ジャンルを問わず注目の作品をご紹介しています。

第2回は『薔薇王の葬列』。大好きな英国史を舞台に、シャエイクスピアを原案に描かれた、ゴシックロマンです。

去る11月、シアトリカル・ライブ『The Black Prince』を体験した。衣裳をまとった声優たちの熱演を、大迫力の生演奏や特殊効果とともに楽しむ新感覚読劇だが、今回の舞台は中世イングランド。主人公はエドワード黒太子(鈴村健一)とその弟ジョン(諏訪部順一)で、歴史マンガ脳が大いに刺激された。十字軍、百年戦争ジャンヌ・ダルクと、羅列するだけでときめきが止まらない中世史だが、なかでも有名なのが薔薇戦争だろう。

薔薇戦争とは、前述のジョン(ランカスター公)と末弟エドマンド(ヨーク公)の子孫による、イングランド王座をかけた内乱である。ランカスターは赤薔薇、ヨークは白薔薇を旗印に戦い、エリザベス1世の祖父の即位で30年ぶりに終結。女王の時代にはシェイクスピアの史劇『ヘンリー6世』『リチャード3世』として大ヒットした。

今回ご紹介したいのは、このシェイクスピア劇を原案にした菅野文のダーク・ファンタジー『薔薇王の葬列』だ。2013年連載開始、現在コミックス8巻。ドラマCD付録号は完売必至の、「プリンセス」の看板作品である。薔薇戦争という響きは、なるほど少女マンガにはうってつけかもしれない。しかし、その実態は陰惨な親類同士の相続争い。「ドロドロ展開にもほどがある」といううれしい悲鳴(?)も聞くが、文句は実在した王たちに言ってくれ、というほかない。

(後略)

薔薇王の葬列 1 (プリンセス・コミックス)

薔薇王の葬列 1 (プリンセス・コミックス)

 

 

リチャードを愛するひとはたくさんいるのに、どうしてこんなにもすれ違ってしまうのかーー読み進めるうち、みんながいとしくてたまらなくなる本作。

歴史マンガの魅力は、その運命を知っているはずの登場人物に死なないでと願ってしまったり、好きすぎて聖地巡礼するうちに新しい世界の扉が開いたり、「あの事件の裏にはこんな真実が」「こんな心理的要因が」という新解釈が無限に生まれたりすることだと思います。

かつて『オトメン』で一世を風靡した菅野先生は、当時から新選組ものなどにおいて、独特の解釈と疾走感で歴史を描く、愛を感じる作家。

「真理は時の娘(真理は時間がたてば明らかになる)」――かつて作家ジョセフィン・テイのミステリーがそうであったように、『薔薇王の葬列』が21世紀の新たなリチャード3世像の一助となることを、願ってやみません。

 

ちなみに冒頭のシアトリカル・ライブ『The Black Prince』は、ラジオで共演中の女優・朝倉あきさん(『かぐや姫の物語』主演)の出演作品。「麻衣さんが好きそうなので」と誘っていただいた、すばらしい初体験でした。

「好き」からはじまる新しい世界ーーそんな多幸感を、日々書き留めていきたいな、とあらためて思います。

次号は2月中旬発売予定。どうぞお楽しみに!

www.ichijinsha.co.jp

 

Febri Vol.46

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