【掲載】私たちの「BANANA FISH」| LisOeuf Vol.09
人生を変えた漫画がある。
大学受験を前に進路を決めかねていた私に、漫画好きの従兄叔父がそっと貸してくれた黄色いコミックス――それが『BANANA FISH』だった。すでに「古典」だったが、読みはじめると一気に惹きこまれ、読了後に2日ほど学校を休んだ。登校してすぐ第一志望をニューヨーク市立大学に変更し、夏休みには突き動かされるように短編を書いて賞を獲り、物書きになろうと決めた。
アニメ化のニュースが解禁された昨年秋――あれから20年経つのに、一晩中涙が止まらず自分でも驚いた。
アッシュのように強くなりたくて、彼らのような物語を紡ぎたくて、必死に生きてきた。そうした感慨と、「きっとうまくいく」という確信がないまぜになって、胸がいっぱいだった。
あの確信は、『BANANA FISH』と同様アニメというジャンルを愛してきたこととも無関係ではないだろう。本稿では、『BANANA FISH』のなにがここまで人を魅了するのか、原作ファンの私がなぜアニメ化の成功を期待しているのかを、あらためて整理してみたい。
というわけで、アニメ音楽雑誌『リスアニ!』の姉妹誌『LisOeuf♪(リスウフ)』にて、コラムを掲載していただきました。
きっかけは、一迅社『Febri』でのコミックリコメンド連載。正真正銘「人生を変えた作品」である『BANANA FISH』について語った本稿を目にとめていただき、このような形でご紹介いただいたことに感激しています。
コラムでは、舞台設定とアッシュ・リンクス、そして奥村英二が象徴する「自由」を軸にした原作論を展開。加えて、『Free! -Eternal Summer-』で出会った内海紘子監督の天才性への期待など、アニメファンとしての思いも綴りました。
「人間は運命をかえることができる 豹にない知恵をもって そして君は豹じゃあない そうだろ?」
大人になって、さまざまな経験をしてあらためて思うのは、アッシュの不屈の精神にとって、英二の揺るぎない信頼がどれだけの支えだったかということだ。
掛け値なしに「きみならきっとできる。信じている」と言ってくれる存在に出会うことなど奇跡に等しい。それでも――その奇跡を信じるために、私たちは『BANANA FISH』を読む。
(後略)
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この20年、『BANANA FISH』は折にふれ、私に出会いや変化を与えてくれました。
『BANANA FISH』以前と以後では、世界の見え方がまるで違います。
それこそヘミングウェイの『何を見ても何かを思い出す』というタイトルのように、私の素養、思考、存在の一部を育ててくれた大切な作品なのです。
まもなくスタートするアニメ『BANANA FISH』をきっかけに、新しい読者が、末永くこの作品を愛してくれたら幸いです。
今回のリスウフとの出会いもまた『BANANA FISH』を愛してきたからとしか言えない、さまざまな導きによるものでした。感謝しつつ、今後も歴史や音楽や声のお仕事を切り口に、さまざまな作品について語っていきたいと思います。
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➢2009年頃、オイスターバーでの『BANANA FISH』会で出会った担当編集者(アッシュ坦)と作った著書です。吉田作品のBGMや映画『アマデウス』について言及。
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