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クオ・ヴァディス

 

「主よ、どこに行かれるのですか (Quo vadis, Domine?)」
「私が今からいくところに、あなたは今いくことはできない。しかし、後からいくことになる。」
――ヨハネによる福音書

妹が買ったばかりの美しいペールブルーの手帳の写真を送ってきたので、わたしも迷っていったクオ・ヴァディスを買うことにした。
今年はMonthly 4に戻すこととする。
学生の頃、よく使っていた形だ。

Quo vadisというメーカーの名が、「どこに行くのか」という問いかけだと知ったのはいつだったか。
使いはじめた頃から知っていたのかもしれない。
14,5の頃のわたしは、フランス語やラテン語やとにかくその周辺の事物を信奉していて、ありとあらゆることを知りたがっていたから。

アジェンダ」というフランス語の響きは、日本でよく使われる「ノート」や「ダイアリー」よりも、「自分の行動を決めていく」という意志が感じられてすきだった。
15年もこの手帳を使いつづけてきて、ほかのデザインや利便性に惹かれることがあってもけっきょく、ここに戻ってしまうのは、クオ・ヴァディスという名の、力なのかも知れなかった。 

「大切なのは、どこかを指していくことなので、到着することではないのだ、というのも、死、以外に到着というものはあり得ないのだから」

闇にとらわれるたびに思い出すサンテグジュペリの言葉に出会ったのも、同じ頃のことである。
1995年の、黒い表紙のクオ・ヴァディスにはいまも、この言葉が記されている。

 

夜間飛行 (新潮文庫)

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