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【Books】萌え男子がたり | 『トーマの心臓』『銀魂』他

土曜の真夜中、敬愛する編集U氏と萩尾望都について語った。
仕事のためにまじめに語っていたのに、いつしか話題は、
「わたしたちはどんなにオスカー・ライザーを愛しているか」
に終始していた。
いつものことである。

聴覚派で情動型のわたしと視覚派で思考型のU氏は、いつだって少しずつ着目点や感じ方がちがうが、オスカーを愛するその一点においては一心同体であり、やはり同様にモーガン(『ばら色の頬のころ』)や銀さん(『銀魂』)を愛している。すごく。U氏は、この種の登場人物たちを“見守り孤独系”と呼ぶ。ルーツは『キャンディ・キャンディ』のテリィだそうだ。

『萌え男子がたり』(ブックマン社)は、中村明日美子の表紙と錚々たる執筆人の名前につられて衝動買いしたのだが、かなり話題の本だったらしい。
凄腕BL作家52人が語るそれぞれの「萌え男子」。
人気作家から新進気鋭まで、 王道から東京漫画社系までが、幅広くとりあげられている。
作家ひとりにつきフルカラーイラスト+コメントで見開き1ページという体裁なので、当然、読むことがメインのエッセー等に比べると内容は薄い。
しかし、

・未知のカタログであること
・少女マンガ・BLの現在を知る資料であること

両面での存在価値は大きくこちらの「語り」も盛り上がる。
「萌え男子は女子の数だけ存在する!」のコピーどおり、52の萌えがあれば、それはひとつくらいは「コレわかる!」があるはずで、わたしのベスト萌え男子は井上ナヲさんの「けだるげ男子」。

とにかく、ぱっと見た瞬間にこの人寝てるのか、起きているのかすら分からない!くらいの顔から雰囲気からすべてがぐだぐだしている。良く言えば(?)何かを悟ってしまったような達観したような落ち着きを持ち、あまりガツガツせず、流れ行くまま、気の向くまま、昔ながらの友人にも「アイツは昔からあーだったよ」と言われてしまうような、歳を重ねて老け込んだのではなく、生まれ持ったけだるさを漂わせている。

それが「けだるげ男子」である。
無論、目は死んでいる。そんな目がキラリと光る瞬間を夢見てしまう。ルーツは必殺仕事人の中村主水だそうだ。おもしろい。
こういうリンクしていくかんじが、ひとと萌えを語る醍醐味である。

さっそくMと語った。
Mが好むのは、たいがい黒髪でマジメな男である。堅物といってもいい。マジメで堅物なので口下手でぶっきらぼう、しかし根は誠実でやさしいゆえにヘタレですらある。
表面はクールなエリートぶっているのも可。もやもやを心に隠し、No2的な仕事をし、たまにキレる。キレるとなにをするかわからない。
かくして萌え属性は、「ツンデレ男子」「側近男子」「狂犬男子」。ルーツは『ときめきトゥナイト』の真壁くんだそうだ。

わたしは、だいたい(マンガでいうと)白い髪が好き。マイペースで飄々としているようにみえて、実は周囲を切ないほど気遣っている。兄気質で、意外に統率力もある。口は達者……全体的にMの真逆を考えればよい。かくして萌え属性は、

けだるげ男子
朝日新聞の広告にも使用されたほどのデフォルトぶり)

甘党男子
(蒸しパンつくってやったというセリフだけで萌えられる)

説教男子
(小言、あるいは愚痴でも可。両方ともいつも言ってる)



……ルーツっていうか、まんま銀さんでした。

(2009年11月29日「乙女のクラシック」初出)

銀魂-ぎんたま- 43 (ジャンプコミックス)

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